20.財政 20−1 財政の基本原則     1.財政民主主義   第83条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。 2.租税法律主義   第84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。   財政法3条 租税を除く外、国が国権に基づいて収納する課徴金及び法律上または事実上国の独占に属する事業におけ る専売価格もしくは事業料金については、全て法律または国会の議決に基づいて定めなければならない。  (1)意義…歳入面から財政民主主義を規定したもの  (2)租税の意味   *租税とは→固有の意味…国または地方公共団体が、その課税権に基づいて、特別の役務に対する反対給付としてでは    なく、その使用する経費に充当するために、強制的に徴収する金銭給付のこと。   *国民に対して強制的に賦課される金銭( 専売品の価格、営業許可に対する手数料、各種の検定手数料、郵便・郵便    貯金・郵便為替などの料金等)が「租税」に含まれるか。B+    →立法政策説:租税に含まれない。立法政策上法律または国会の議決に基づくと定められているだけである。 83条説(佐藤幸):租税に含まれない。財政法3条は84条の租税法律主義ではなく、83条の財政民主主義の        要請に基づいて制定されたものである。 84条説(通説):租税に含まれる。財政法3条は84条の租税法律主義の要求するところである。   r.租税法律主義の原則は、固有の意味の租税のみに関する原則ではなく、およそ国がその収入のために国民      に一方的・強制的に賦課する金銭負担は国会の議決に基づかなければならないとする原則である。  (3)法律により議決を要する事項    … 課税要件、 課税手続の法定、 明確性が必要 罪刑法定主義と同様   *法律上は課税できる物品であるにもかかわらず実際上は非課税として取り扱われてきた物品( パチンコ)を、通達    によって新たに課税物件として取り扱うことは、憲法に違反しないか。    →判例)違反しない。r.通達の内容が法の正しい解釈に合致している以上課税処分は法の根拠に基づく処分である。 通説)違反する。r.実質的に課税要件を変更するものであり、通達によることは84条に反する。 3.国費の支出及び国庫債務負担行為の議決   第85条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。   歳出面から財政民主主義を規定したもの。 4.公金支出の禁止   第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属し       ない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。   前段  政教分離の原則の財政面からの保障   後段   *89条後段の趣旨は何か。A    →自主性確保説:私的な事業への不当な公権力の支配が及ぶことを防止するための規定である。すでに強い支配が及     んでいるところにはそのような心配がないので公金支出も許されることになる。 公費濫用防止説:公財産の濫費を防止し、慈善事業等の営利的傾向ないし公権力に対する依存性を排除するため。  (司通)  r.事前・教育・博愛の事業の場合には、その目的の公共性のゆえに公費が濫用される恐れが多い。 中立性確保説:私人が行なう教育等の事業は特定の宗教的信念に基づくことが多いので、宗教や特定の思想信条が、    国の財政的援助によって教育等の事業に浸透するのを防止するため。   *「公の支配」の意味は何か。特に私学助成の合憲性に関連して問題となる。B    →自主性確保説‥その事業の予算を定め、その執行を監督し、更にその人事に関与するなど、その事業の根本的方向     に重大な影響を及ぼすことのできる権力を有すること。 公費濫用防止説‥国または地方公共団体の一定の監督が及んでいることをもって足りる。    r.社会福祉国家理念より公金支出を広く認めるべきである。 20−2 財政監督の方式     1.予算   第86条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。   第87条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出すること    ができる。      すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。   第88条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。  (1)意義  予算…一会計年度における国の財政行為の準則    *予算の法的性格は何か。A     →予算行政説:予算の法規範性を否定する。予算は国会が政府に対して1年間の財政計画を承認する意思表示である。    c.財政民主主義の原則に反する。  予算国法形式説(通説):法律と異なる特殊の法形式である。    r.財政民主主義の観点から法形式と考えるべきであるが、 予算は政府を拘束するのみで、一般国民     を直接拘束しない、 提出権が内閣に属する・衆議院に先議権がある・衆議院の再議決制が認めら        れていないという法律と異なる取り扱いがされている、という差異がある。   予算法律説:予算は法律それ自体である。r.財政民主主義の強調   性質    59条・60条の解釈 国会の修正権 予算と法律の不一致 予算の拘束力の根拠    予算行政説  行政行為  60条を適用 厳しい制限  生じる  財政法    予算法形式説 国法の一形式 60条を適用 争いあり   生じる  財政法    予算法律説  法律  59条1項をも適用 自由  理論的に生じない  法律としての拘束力  (2)予算と法律の不一致    *予算があるのに法律がない場合に内閣・国会はどうすべきか。(予算法律説以外)B     →通説)内閣は支出を実行することはできない。国会には法律制定の義務はない。    *法律があるのに予算がない場合に内閣はどうすべきか。(予算法律説以外)B     →通説)内閣は「法律を誠実に執行」する義務を負っていることから補正予算、経費流用、予備費支出、法律の施行の        延期等の方法で対応すべきである。    (3)減額修正と増額修正    *減額修正は可能か。D     →通説)限界なく可能である。r.財政国会中心主義の原則。憲法の中に国会の予算審議権を制限する規定はない。    *増額修正は可能か。限界はあるか。B     →否定説 r.予算行政説から。   肯定説−制限説:予算の同一性を損なうような大修正は許されない。       r.国会を財政処理の最高議決機関とする憲法の精神から見て、ある程度の国会の増額修正は可能         であるが、憲法は他方において予算発案権を内閣に専属せしめているから、この建前を根本か     ら覆すような修正は許されない。 非制限説 r.予算法律説からは当然。予算法形式説からも財政国会中心主義の原則と憲法の中に国会の 予算審議権を制限する規定はないことを強調してこの説をとることも可能。 2.決算審査   第90条  国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告ととも に、これを国会に提出しなければならない。      会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。   第91条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。   事後的統制としての決算制度